lynnosukeのブログ

愛なんてそこじゃなくて生きてるだけじゃ足りなくて

白い部屋の中で

初夏、札幌でザ マッドカプセルマーケッツのライヴがある為に札幌へ行く準備をしていた。シャワーを浴び髪の毛をセットした。Tシャツにパラシュートパンツを穿きサスペンダーを付けた。部屋を出、ドクターマーチンを履く為に前屈みになった刹那、サスペンダーが弾けた。見るとクリップが壊れていた。ライヴで汗だくになっても良い様にブカブカのパラシュートパンツ。サスペンダーで吊らないと脱げてしまう。瞬時に浮かんだ友人に電話をした。直ぐに電話に出てくれた彼は寝起きであった。サスペンダーを貸して欲しいの。いいよ。車で5分ほどの彼の家に着いた。赤いインパラは無く黒のクラウンが停まっていた。本当にいるのかと半信半疑でチャイムを鳴らすとお母さまが招き入れてくれた。慣れた階段を昇り部屋に入ると床に仰向けになりながらライヴ映像を見ていた。彼の傍らに腰を下ろし一緒に映像を観た。画面を指差しながら、あれ、俺。うん。わたくしはこれから札幌まで行かないとならないから体力を温存したく彼の横に横臥した。俺さぁ、この間このソファーに座っていたらあの女急に、俺の指を舐めだしてさぁ、エロい女だと思ったわぁ。しちゃったの?それはね。その女性はわたくしも知っていて少しだけ驚いた。彼には彼女がいたから。ねぇ?サックス吹いてよ。いいよ。彼は起き上がりサックスを手に白いシーツが敷かれたベッドに腰を下ろした。テナーサックスの音が響いた。物凄いボリュームで。音の途切れに一階からお母さまの声が聞こえた。お母さん、外に行きましょう。と、お婆さまを外に連れ出した。この家には彼とわたくし二人きり。開けっ放しの窓の外からお母さまとお婆さまの声が聞こえたと同時に彼はサックスを吹くのを止めた。サスペンダーな、どっちがいい?こっち。彼はまた床に寝転んだ。わたくしはサスペンダーを付けると長さが合わずに、あのねぇ?何かこっちが長いの。と、言うと上腿だけ起き上がった彼は長さを調節しながら、りんちっちゃいからな。と、また寝転んだ。眠たいの?起こしちゃってごめんね。いや、起きてはいたんだけどさぁ。わたくしもまた彼の横に寝転んだ。彼はテレビ画面を観たまま、りん?あいつとどんなチューするの?わたくしは一瞬、躊躇ったが左耳に口を付けた。こうだよ?と、直ぐに口を離すと、お返し。と、彼は唇にキスをしてくれた。お酒臭いね。あぁ、昨日、呑み過ぎてな。店のお客もいっぱい来てよ。お酒臭いのを気にするかと思いわたくしは頬にキスをした。彼は突然わたくしの首筋に腕を入れ抱きしめた。柔らかな彼の唇は荒く開かれ舌が入ってきた。サスペンダーで吊してあるだけのパラシュートパンツは直ぐに脱がされた。恥ずかしいよ。と、言うとわたくしを抱える様にベッドに滑り込んだ。りん、バンザイして。と、言った頃にはわたくしはショーツ一枚だけの姿であった。わたくしの上でTシャツを脱いだタトゥーだらけの身体で覆い被さった。タトゥーをしている男性に抱かれるのは二人目だと思いながら。汗ばむ身体からは刺青男性特有のすえた匂いがした。オールバックであった彼の前髪は解けわたくしの額に当たった。時折、窓から入る初夏の風は心地良く白いレースのカーテンと共に揺れる彼の前髪。とても美しく奏でた身体。幾度となく重なり合いながら。セットをしたはずのわたくしの髪の毛は乱れ札幌に行かなくちゃいけないから行くね。おぅ、気をつけて行けよ。楽しんでこい。分かった。と、わたくしは最後に口づけをした。ベッドの中から手を降る彼と何事も無かったかの様に。