lynnosukeのブログ

愛なんてそこじゃなくて生きてるだけじゃ足りなくて

そこにいた景色

夜の街にいても孤独じゃなかった?と、聞かれ、埋める事などはできずにテールランプを見ていた。と、答えた。
友人の紹介で知り合った高校を中退した男性がいた。彼のお兄ちゃんはクラブでバーテンダーをしていたのでわたくしは顔パスでクラブに出入りをしていた。そのお兄ちゃんは彼女の家に行ったっきりでマンションはただの空き家であった。家賃がもったいないという事で彼が住む事になった。ある夜、市内で合同ビッグパーティーがあるのでわたくしは先輩を連れ夜の街にいた。結婚式場で開かれたパーティーは市内の美容室、アパレル、飲食店とそうそうたる人数の中に先輩は緊張をしかなり酔っ払っていた。というか会場全体の男女が酔っ払いパーティー終了後には廊下に何十人もの女性が座り込みそれを男性達がお持ち帰りをしていた。混沌とした会場からわたくしは先輩を連れクラブに行った。さらに酔っ払った先輩はトイレに入ったきり暫く出て来ない。ドアを叩くも声すらしない。危険に感じたわたくしは彼のお兄ちゃんにトイレの鍵を開けてもらった。先輩はただ眠っていた。トイレからなんとか連れ出しタクシーに乗った。わたくしの肩にもたれたまま眠っている先輩の金髪を間近に見ているとタクシーの運転手はバックミラー越しにこう言った。彼氏だいぶん呑んだんじゃない?えぇ、緊張をしていたみたいで、彼氏ではなくバイト先の先輩です。あえて学校の先輩だとは言わずに。マンションに到着をしたわたくしは先輩を抱え階段を昇った。脚がもつれている先輩はそのまま階段から落ちた。ようやく部屋の前まで辿り着き事情を説明し彼の部屋に泊まらせてもらう事にした。玄関から見えた布団の足元に先輩はなだれ込んだまま眠った。彼と二人で呑み直しシャワーを借りた。二人で狭い布団に入ると抱っこをしてくれた。イチャイチャとしわたくし達は足元に眠っている先輩を忘れていた。長い彼の髪の毛はわたくしの顔を包み込んだ。その冷たい毛先を感じながら朝になっていた。目が覚めた先輩は慌ただしくわたくし達を起こした。駅どっち!?ここどこ!?さっき寝たばかりのわたくし達は曖昧に指を差した。その挙げた腕がわたくしの肩を抱きまた寄り添って眠った。駅まで送ってくれるという朝の街を二人で歩いた。こんなにも長い距離を一緒に歩けるなんてそれだけでも嬉しかった。横に並ぶ彼を見て好きだと思った。それから夜の街から彼のマンションへ通った。二人でクラブにも行った。わたくしの誕生日にはお金が無いのにプレゼントをくれた。小さな箱を開けるとピンキーリングが入っていた。一緒に食べていたアイスクリームを口移しで食べた。冷たいアイスクリームはわたくしの口の中に入ると温かくなりその温められた白いクリームで彼の身体を愛撫する。いつも二人きりでいた。認めてはいけないお互いを認め合い繋ぎ合った。二度目の秋、彼は夜の街の喧騒の中に消えた。ずっと一緒には居られなかった。夜のせいで。