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lynnosukeのブログ

愛なんてそこじゃなくて生きてるだけじゃ足りなくて

インディゴブルー

高校に入学をしたての頃、教室に隣のクラスの男子生徒が入ってきた。ブレザーの上からデニムジャケットを着た彼と目が合った。一瞬、時間が止まった。一目惚れをした。休み時間に度々わたくしのクラスにいる同じ中学校であったらしい男子生徒に会いに来ていた。その距離、斜め前の机の場所。わたくしは斜め前の机の男子生徒と次第に仲良くなり一目惚れをした彼とも少しずつ話す様になったが友達未満であった。勇気を振り絞ったわたくしは生徒手帳のアドレス帳に電話番号を書いてもらった。すると、俺にも書いて。と、胸の内ポケットから生徒手帳を出してくれた。その日の授業は上の空で帰宅後もソワソワとしていた。たかが家の電話番号を交換しただけなのにお風呂に入る時に家の電話の子機を脱衣場に置いた。自分から電話をするほどの勇気は無かった。シャンプーをしているとドア越しに電話が鳴った。慌てて出ると彼からであった。あまり話をした事が無かったので電話越しの低い声にドキドキした。
今、大丈夫?
いや、あの、お風呂に入っていて…
電話してみようかなぁ、と、思って。ラジオって聴ける?
ラジオ?
今さ、ラジオで三国志の連載がやっていて、俺、三国志が好きで聴いてもらいたいなぁ、と、思ってさ。
子機を持ったままわたくしは泡だらけの頭で身体にバスタオルを巻き部屋へ走った。ラジオをのチューナーを合わせると何頭もの馬が蹄の音を立てていた。語り手は一軍が攻めたところである。と、言った。訳が分からない。電話越しに彼は言った。ちょうど攻めに来られて殺り返しに行くところなんだよねぇ。時折、物語の説明をしてくれて、じゃあ、またね。と、言った。次の日、学校で会っても笑顔だけでなかなか話す事は無かったが夜には電話がきた。そんな毎日が続きわたくしは友達に相談をした。好きなんだけれどなんていうか友達になりたいんだけど電話はあったりしているんだけど…友達はわたくしが乙女になっている様子を初めて見たよ。と、笑った。豪快な友達は彼が休み時間にクラスに来るとりんちゃんと喋りな!と、あからさまにした。そうしてわたくし達のバンド部屋に来るようになった。
わたくしから言った。
付き合って欲しい。と。
いいよ。と、彼は言ってくれた。休み時間にクラスに来たらべったりと一緒にいて始業のチャイムが鳴ると、行くね。と、言った。まだ一緒にいたくて背中に飛び乗ったらそのままおんぶをされて隣のクラスに連れて行かれそうになった事もあった。本当に好きだった。バンド部屋にいる時、一階の大きなテーブルの上で添い寝をする。彼は右耳にわたくしは左耳にイヤホンをして。T-BOLANの離したくはないをいつも聴かせてくれた。帰りは家まで送ってもらいやっぱり駅まで送る。と、二人でいつまでも行ったり来たりを繰り返した事もある。ある日、彼は学校を休んだ。友達に聞くと、今日、乗って来なかったぞ。どうしたんだろう?あいつの事だから這ってでもりんちゃんに会いにくるはずだよな。その日一日の淋しさといったらなかった。放課後バンド部屋に寄ろうかと思ったが一人で帰った。帰ったら電話をしてみよう、うん、そうしよう。と、頭の中は彼の事でいっぱいであったその時、後ろから急に左腕を引っ張られた。びっくりとし振り返る頃にはいつものデニムジャケットの青色が目に入ったと同時に抱きしめられた。りんちゃん、会いに来たよ。彼の体は物凄く熱かった。熱あるの!?そう。家より近いバンド部屋に連れて行った。二階からはいつものメンバーの騒ぎ声がした。具合が悪いのにさもわたくしを連れて来たかの様に堂々とドアを開けた。みんなは真っ赤な顔の彼を見て、あぁ!?おまえなしたの!?と、言った。熱あって授業は流石に出れんわと思ったけどりんちゃんに会いに来た。アツいねー!と、冷やかされた。とりあえずおでこに冷たいタオルを当て寝かせた。安心をしたのか寝息が聞こえた。わたくしはみんなにこれからバイトに行くからちゃんと連れて帰ってあげてね。と、行こうとすると、俺、起きてるよ。と、彼は起き上がった。送ってくわ。寝てていいから。と、言ってもバイト先まで送ってくれた。バイト頑張ってね。うん、気をつけてね、ありがとう。次の日、友達に聞くと、あいつりんちゃんを送って戻って来た時、玄関先で倒れて連れて帰るの大変でさ、無理すんなって言ったらさ、りんちゃんが淋しがると思ってって、あいつ言ってさ、すげぇなって思ったわ。みんなからもおまえらそんなにくっついて飽きないの?と、聞かれた事があったがむしろ足りないくらいであった。本当に好きだった。抱っことチュウばかりをしていた。ずっと彼の重みの下にいた。ある日の放課後、駅前に隣のクラスの女子がいた。わたくしは珍しいな、男漁りでもしに来たのだろうな。と、思いながら彼を連れ油彩教室に行った。その後わたくしは用事があったので駅で別れた。まだ女子はいた。次の日バンド部屋で彼は言った。昨日、駅前に○○さんがいたでしょ?付き合って下さいって言われた。取られる。と、思ったわたくしはもう涙ぐんでいた。彼は言った。俺はりんちゃんと付き合っていて、りんちゃんの事が好きだからって伝えたから安心して。ね?ごめんね、心配させたね、泣かせちゃって言わなきゃ良かったね。一緒になればいつかはいなくなると思っているわたくしは淋しさでいっぱいになった。そんな日々を送りいつも一緒にいた。いつも通り放課後バンド部屋に行くといつものメンバーはいなく彼と同級生の男子だけがいた。珍しい組み合わせに何か引っかかった。同級生は言った。りん、座りな。彼の横に座ると彼は言った。俺、学校辞めるから明日からいないよ。混乱した。彼は立ち上がりわたくしの頭を撫でて、じゃあね。と、言った。同級生は言った。頑張れよ、俺がりんもらうから。軽く頷いた彼を瞬時に引き止めようとすると同級生はわたくしの腕を掴み、行くな。と、言った。それでもわたくしは二階の窓から泣きながら、行っちゃやだ!と、叫んだ。彼は笑顔で振り返り大きく手を振り走り去って行った。窓から叫んだ時、いつものデニムジャケットの青色が目に焼き付いた。いつも一緒にいた。本当に好きだった。膝から崩れ落ちて泣いているわたくしをずっと同級生は抱きついて離さなかった。ここにいろ、俺といろ。無理やり口で唇を塞がれた。あいつは明日からいないんだから。自分から初めて告白をした相手、お揃いのシャープペンシル、ネクタイの締め方が分からないと言ったら笑顔でわたくしにネクタイを締めてくれた。一緒に聴いたラジオ、作ってあげたお弁当。手を繋いで歩いた毎日、何度も呼んだ名前。雨宿り。彼の匂い、デニムジャケット。本当に好きだった。
https://youtu.be/9zdNdjF-htY