lynnosukeのブログ

愛なんてそこじゃなくて生きてるだけじゃ足りなくて

パンチライン

俺の女、何かした?見知らぬ男性はそう言った。友人とわたくしはビアパーティーに来ていた。二人組の男性にしつこく話しかけられていたところ一度、通り過ぎた男性であった。わたくし達と二人組の男性が知り合い同士なのか確認をしたそうだ。俺の女、何かした?と、わたくしの前に立った男性は二人組に詰め寄った。面倒な事を避けたい二人組はその場を去ろうとしたが見知らぬ男性は後を追いかけたのでわたくし達は止めに入った。わたくしの正面に立った男性は言った。名前なんてーの?りん。俺はトモ。呑みに連れてっちゃるわ。派手なポリシャツを着ていた男性は身なり相応にチャラい言葉を発した。友達にどうする?と、聞くと、りんが誘われたのだから二人で行っておいで。と、言った。歩き方までチャラい男性と呑みに行った。カウンターに座り話をしていると意外に真面目な部分もあって身なりは虚勢でしかないのかな。と、感じた。俺の好きな歌、唄っていい?"Let It Be"わたくしはまるでドラマの中にでもいるのかと思った。しばらくすると酔った彼はわたくしの肩を抱き口の中に舌を入れてきた。今日はここまで、送ってやるわ、家どこ?わたくしはあまり人に住んでいる場所を教えない。これは別れた時のトラブルを避ける為だ。会ったばかりの男性なら尚更でわたくしは自分の家とは逆方向に送ってもらった。電話番号、教えて。と、携帯電話が無い時代、男性はボールペンを出しレシートの裏に書いた。俺の番号も教えるわ。と、もう一枚のレシートの裏に書いた。レシート何枚、持っているの?そうやって何人にも声をかけているんでしょ?バレた?財布、見てみ?もうレシートは無いべ?と、言い、わたくしの頬を両手で包み口づけをしてきた。んじゃ、明日ね。と、男性は言った。わたくしは拍子抜けをした。会ったその日にキスをされ明日ね。と。遊ばれているんだ。ならばこちらから明日、電話をし遊んでやってもいいと思った。家とは逆方向の夜道を一人で歩いた。歩き疲れたわたくしは今日はもう寝よう、とした。電話が鳴った。電話に出ると、さっきの男性であった。ちゃんと帰ったか心配でさぁ、あれでしょ?かなり歩ったしょ?(何で知っているんだ…)りんはきっと真面目な女だと思って家なんて教えないと思ったんだよねぇ、してさっきもかけたけど電話に出ないから電話番号も嘘かなぁって思ったんだけど合ってるね。明日、何時にする?学校、何時に終わる?迎えに行くわ。わたくしは彼のペースに飲まれた。次の日、本当に学校に迎えに来た。りん、一回会社に戻らんとならんからちょっとだけ待ってて。うん。待っている間、考えていた。忙しいのなら何も今日、会わなくても良いのにせっかちというか何なんだろう。と、考えながら、考えているという事はもう彼の事が気になっている…気になっている!?と、声に出た。急いで戻ってきた彼は汗までかいていた。手に持ったお茶を飲み、あぁ、こっちりんのだったわ。お茶、買ってきた。どこ行く?わたくしは言った。ねぇえ?落ちついて。彼は言った。時間なんて早いんだよ?サクサクしてかんと、ね?サクサク。やっぱりチャラいと思った。サクサクやってサクサクいなくなるんだ。とりあえず座って話そう?そうだな、りんあれだべ?親いないべ?(何で知っているんだろう…)俺とおんなじ目をしてたから、だから声かけたんだよ。このストレート過ぎる彼に、ストレートだね。と、言った。あ、俺?ストレートも得意だね。ボクシングやってんのさ、言ってなかったっけ?ようやく間髪を入れない態度とリズムはボクシングのせいか。と、一致した。心を許し始めそれから毎日のように一緒に遊んだ。いつも"Let It Be"を口ずさむ彼に脳内をセルフ洗脳されていた。ねぇえ?私たちって友達なんだよね?と、聞くと、言ったしょ、俺の女って。出逢ってからの出来事が巻き戻されノックアウトをされた。夏も終わる頃、彼は突然、俺、大阪に行くからさ、ボクシングに女はいらない。と、言い、いなくなった。汗をかいて脱ぎ捨てた彼のシャツだけが残る部屋でわたくしは二度と"Let It Be"が聴けなくなった。