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lynnosukeのブログ

愛なんてそこじゃなくて生きてるだけじゃ足りなくて

懸ける

土曜日あの車が来るらしよ?一回、競りたいよね。今のところ一番速いらしいわ。わたくしはGT-Rの助手席に乗っていた。ゼロヨン会場に到着をすると噂を聞きつけてかいつもより車が多かった。遅れて到着をしたわたくし達を友人達が待っていた。助手席の窓を開けたYはあの車居るの?と、同時に物凄いスピードで一台の車が入ってきた。あれだな。スタート地点を目掛けた車を見てYもスタート地点へ車を走らせた。助手席の窓は開けっ放しであったのでわたくしは箱乗りをした。友人達は危ないから窓を閉めろ!と、言ったがわたくしは聞き入れなかった。遂に二台の車が競るという事で四百メートルの道路は幾台ものギャラリーのヘッドライトで照らされていた。異様な直線であった。いつもはゴール地点すらも分からない漆黒の先にヘッドライトだけで突っ込んで行く。シグナルのサインを出す男性が交代された。わたくしは箱乗りのままサインを出すのが一番巧いと言われる男性の目を見た。通常なら箱乗りは許されないが両手を広げた男性は四、と、カウントを取り出した。そこに居た誰もが思った。箱乗りのままサインが出たよ!?三、横に並んだ車の助手席を覗くと女が乗っておりわたくしを睨みつけた。二、(あんたの彼氏だか友達だか知らんけれどわたくしが好きになった男が一番なんだよ)一、両手が振り下ろされた。同時にスタートを切った。荒れ狂うエンジン音と共に鼻先はツライチであった。噂にあるだけに本当に速い。息など出来ない。友人達は言った。りんのさっきの背中を見た?苛立っている背中だったわ。死ぬ気だわ。確かにわたくしは苛立っていた。運転席になるべく風が入らない様にわたくしは窓枠を体で覆っていた。三百メートルに差し掛かった時、鼻先が同じであった横の車が一瞬ブレた。当たる。と、同時に投げ出される覚悟でいた。横の車を見ると助手席の女がコンソールボックスにしがみついていた。いきなり失速をした車を振り返って見た。大勢のギャラリーのクラクションの音が鳴り響いた。四百メートルをぶっちぎったYは友人達の元へ行くのに反対側の四百メートルを疾走した。友人達の前に箱乗りのまま戻ってきたわたくしを見て友人達は正気を失っていた。四百メートルがあんなにも照らし出されていたのを初めて見たし箱乗りのまま行ったから。横の車、何かトラブルでもあったの?いや、女がしがみついていたから集中力が切れたんでない?話をしていると前方からさっきの車が来た。彼は言った。彼女が怖いって泣き出したから流石に可哀想になって。まだ泣いている彼女の助手席のドアを開けわたくしは彼女の体をさすった。そこにシグナルのサインを出した男性が来た。本来ならばあの状態でのスタートは駄目なんだけれど俺が責任を持てばいいから。あれでしょ?この女の子、普段ソアラの横に乗っている子でしょ?あの速い車の横に乗っている子だから許したんだよね。んでこっちのおねえちゃんは泣いちゃったの、そんなところだと思ったよ、乗せていなかったら互角だったかもね。数週間後の土曜日、事故は起きた。競り合っていた二台の車同士がゴール地点で接触をし助手席に乗っていた女性が亡くなった。以来、命懸けのレースは禁止となった。