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lynnosukeのブログ

愛なんてそこじゃなくて生きてるだけじゃ足りなくて

魂の行く末

歩道が無い新千歳空港建設地の工業地帯の道路を歩いていた。遥か遠くに見える建物まで歩けば助かると。トンネルが見えてきた。果たしてトンネルを出た先に本当に建物があり辿り着けるのかも解らずに長いトンネルに足を踏み入れた。必死に歩いても出口の光は小さなままであった。振り返り過去から未来、塩基の配列の様に同じ景色。入口が大きく口を開けて迫ってくる。戻れない、追われている。絶対に振り返らない。息を切らし途方に暮れた。走馬灯が邪魔をする。何でいつもこうなんだろう。悔しさに涙を流したぎる怒りに変わった。止まるな、続けろ。歩き続け少しずつ先の光が大きくなってきた。何の為か本当に分からない。ようやくトンネルから抜け出せる。今だ、トンネルの大きな出口から放出されると熱射に目が眩み地面に倒れ込んだ。トンネル内とは違い全身に刺さる午後の太陽。水が欲しい。虚ろに頭を傾けると陽炎に取り巻かれたまま奥に目指していた建物が大きく近づいていた。安堵をしたのも束の間、先へと進む道路が無かった。背中を置いていた地面は砂埃が渦巻き全身は汚れた。目を瞑った数秒間。空気が落ちゆっくりと埃にまみれ自分の肉体なのかも感覚ができずに力無く傾いて立ち上がる。目を開けると青空が少しだけ見えるコンクリートの資材置き場の中に居た。熱を帯びた熱いコンクリート、日陰になる部分のコンクリートは硬く冷たく巨大な無機質。早く行かないと夜になってしまう。コンクリートによじ登り滑り落ち汗で額に前髪は貼り付き衣服も汗でじっとりと肌に貼り付いた。目指していた要塞に着いた時、廃墟であった。冷たい建物内に体温が一気に奪われた。湿った衣服の重み、寒い。震えながら見渡しても此処には誰も居なかった。歩いて来たのは何だったのか、幻だったのか。建物を頼らなくなったわたくしは何も無い細い道を歩き出した。大地よりも細い産道の様な道を誰かが通っているであろうと考えた。暗くなっても構わない。子宮の中だって暗くたまにぼんやりと薄明かりが差す程度であった。子どもの頃に見てきた浜は見渡せていたのにいつしかテトラポットで覆い尽くされガラス石も探せなくなっていた。人工的な作為を恨む。十月十日より早いか遅いかは分からないが必ず夜は明けるはずだ。足は縺れ全身が枯渇していた。どれくらいの道程を歩いて来たというのだ。すがる思いと何かを追い求めいた。気がつけば真っ暗闇の中を歩いていた。突然、目の前を塞がれた。行き止まりであった。立ちはだかる壁は大きく此処が何処なのかも分からずしゃがみ込んで息を潜めた。子どもの頃に聴いていた子守歌を口ずさむとそのまま前のめりに弧を描きながら闇へと堕ちて行った。
通りゃんせ通りゃんせ ここはどこの細通じゃ 天神さまの細道じゃ
ちっと通して下しゃんせ 御用のないもの通しゃせぬ
この子の七つのお祝いに お札を納めにまいります
行きはよいよい帰りはこわい こわいながらも 通りゃんせ通りゃんせ
通りゃんせ 通りゃんせ ここは冥府の細道じゃ 鬼神様の細道じゃ
ちっと通して下しゃんせ 贄のないもの通しゃせぬ
この子の七つの弔いに 供養を頼みに参ります
生きはよいよい還りはこわい こわいながらも 通りゃんせ通りゃんせ
衰える我が身で闇へ向かうわたくしは子守歌の三番目の歌詞を知らない。