lynnosukeのブログ

愛なんてそこじゃなくて生きてるだけじゃ足りなくて

流転の彩り

色とりどりの七夕飾り、五色の短冊がカラカラと音を立て風になびく。擦れ合う笹の葉の音は神を呼ぶ。振り返って見上げる星への願い事。織り姫の裁縫の儀式。子ども浴衣の目に残る帯の現代的なピンク色。昼食の薬味の葱が香る。色付きの素麺ばかりをすくう。風鈴の音が揺れている。せわしなく引っ掛けた下駄の鼻緒で足の指が痛むと訴える。色彩だらけのマーブル模様の水風船が寄り集まり浮かんでいる。金魚すくい、朱い金魚に混じる黒い金魚の優雅な尾。歪む水面に映るおはじきのささやかに捻られたガラス緋と翠。裸電球のオレンジ色の光りに揺れる吊された乳白色の綿飴のビニール袋とザラメの温風の甘い匂い。おままごとのプラスチックでできた人工的な色を放つ野菜や果物。横にはどぎつく照る林檎飴が並ぶ。大人にはなりたくはなかった。好きな色をどうぞ、スーパーボールの球体が大小様々と盛られている。テキ屋の威勢のよい掛け声に現実だと耳を塞ぐ。スマートボールが弾け流れる台と球の木の音。魅力のない射的の景品。お化け屋敷の轆轤首と口裂け女の不気味な看板、小屋の中から聞こえる民衆の金切り声。甘さや香ばしさが入り混じる混沌とした空間を抜けると浴衣に纏わりつく匂い。人波に逆らい家路を歩く。涼しい部屋でべと付く綿飴を食べる。指に絡みつく金色の細工の憂鬱。一年に一度しか巡り会わない彦星は浴衣の帯の解き方を忘れている。堪えきれずに浴衣の裾を捲り上げる。折り重なり紡ぎ出す糸。なびく織物。ざわめく七夕飾りと折り紙の下に遠き日を想い幾度となく重なり合う五色の糸。指。一晩中、絡み合う。目を閉じ流れる涙は大きく広がり天の川になる。声にも出さずに微笑む。総ての擦れ合う音が静かに止まる。涙のかけらを握りしめる。また出逢えると信じて。愛する程に。