lynnosukeのブログ

愛なんてそこじゃなくて生きてるだけじゃ足りなくて

自鳴琴

幾何学的な世界にいる。廻り続ける巨大な万華鏡の中の世界に目を閉じる。ゆっくりと頬を伝う涙は音色を奏でる。言葉のない世界。オルゴールの上の幼女が静かに廻る。眺めていると琴線に触れる。共鳴される乳児だった頃のオルゴールメリーの記憶が染み付いている。時に速く廻る風を切る音までも。産まれてからずっと幾何学模様の世界にいる。その世界が嫌でアシメントリーの世界へと足を踏み入れた。長い過去と短い未来。独りでいたいわたくしは静かに涙を流す。愛情に傷付けられる人種もいるのだ。その世界からわたくしは音を立て逃げてきたのだ。見てきた右目を片手でそっと塞ぐ。利き目の左目は見えない。何も見えなくなった世界で静かにオルゴールの音を聴く。終わりが来る前に止まる音色。盲目のまま手探りで機械的にゼンマイを廻す。途中から始まる音色。ジャネーの法則。光を頼りに長い螺旋状の道を歩き始める。幾重もの花びらがスローモーションで肌に当たる。全身に七色のリボンを纏い遠く小さく聞こえるオルゴールの音色。置いてきた記憶。音が聞こえなくなった時、眩い光の中にいた。