lynnosukeのブログ

愛なんてそこじゃなくて生きてるだけじゃ足りなくて

隙間

幾年にも後ろ髪を引かれていたわたくしは深夜、白熱灯の光を放つ洗面台で髪を切り落とす。想いが遺っている髪を自らの鋏で切り落とす。指に力を込め何度も何度も切り離す。我に返る不均衡なわたくしは非対称に髪を残した。切り離せない想い。過去とこれからを知っている君との距離は近いが貴方の髪がフラッシュバックをする。わたくしの慈しみの指の間という手櫛で解いていた温度がある美しい糸の様な光る流れ髪。センタープレスをされ二人が折り畳んだ想い出に針と糸でくるみ鈕を縫い付けた。一生、離れない様に儚くも落ちてしまわぬ様に。炭酸水の気泡が直ぐに消え無くなる狭い空間で聞いた少しだけの足音。折り重ねていた。掴んだ両肩、脱ぎ捨てられない中でわたくしは汗ばんだ。いつも留めていてくれていた記憶。君に合わせ切り落としたはずの髪の襟足。それでも断ち切れなかった。すり抜け絡み合う事など無い髪。貴方との互いに織りゆく先を見るが為に。