lynnosukeのブログ

愛なんてそこじゃなくて生きてるだけじゃ足りなくて

Alive

動けないわたくしはいつも箱の中で横たわっている。ベビーベッドの格子の木をなぞる。バスタオルと供に居たわたくしは動物園で見た牙を剥いた黒ヒョウの前で鉄格子に頭を挟まれる。見えにくい目で箱部屋の中を見渡す。視覚野から側頭部への神経伝達に時間がかかる。締め付けられてきた脳の痛み。頭上にハンドベルの音が大音量で響く。祖父が生前、呼び出しの時に離れ隔てたドアから遠く薄曇った鈴の音を鳴らしていた頃よりも間近に。あの頃いつもいい子で居ようと耳を澄ませていた。大人になったはずのわたくしは音の大きさに心拍数が上がりようやく前頭前野が認識をする。突然、閃輝暗転を起こす。眼を守ろうと瞼を閉じる。視神経はスパイラルに加速をし眼球は振動をする。暗闇の下瞼から幾何学の光が上へと溢れ出す。暗闇の中の眼は記憶の断片として動き回る。全身の痛みにじっと堪える。骨が軋み筋肉や神経が千切れる音を立て内臓は絞られる。疲れきったわたくしは人間の無意識の意味を考える。デフォルトモードネットワーク。その音を聞いている。この世に無意識等は存在はしない。細胞が伝えているのだから。やり直せと思いたい。肢体は木となり這わす。導き出し速度で。