lynnosukeのブログ

愛なんてそこじゃなくて生きてるだけじゃ足りなくて

予感

あの海に沈んでゆく。紺青の海の底へ。君のフィルムを持って。
初夏の午後、光を眩しがる私を考慮しレースのカーテンをひいてくれた。カメラマンであった君は私が持っていたコンデジを触りだした。こういうカメラって難しいんだよ、一眼と違って。カメラを構えさり気にわたくしを収めた。一瞬を切り取るシャッター越しの君。二人で一緒に居る事を周囲から反対をされた。それでも一緒に居てくれた。シャッターを切る音にフラッシュバックをする。
君の前なら目を閉じていられる事に今更、気がついた。
我が儘を言う私とずっと一緒に居てくれた。互いに沈みかけた船で辿り着こうとした。まるでダイナモを目指すかの様に。
終わりが近づいてくる。
君を一番、綺麗に撮れるのは俺だよ。

ねぇえ?
うん?
一緒に死の?
いいよ。

飲み込まれてゆく。
二人で鎖を付け暗い海の中で抱きしめてくれた君の腕を離した。
君の鎖とフィルムを持って。
浮かぶ事は無く、もう、届かない君の声と私の声。腕から消えた君は深く沈み私は離れ浮遊する。