lynnosukeのブログ

愛なんてそこじゃなくて生きてるだけじゃ足りなくて

速度

人混みの中で俺はすぐに彼女を見つけ出した。彼女に向かって歩む道は真っ直ぐに、人波が引いてゆくのを感じながら。喧騒の中、遠く離れていた彼女は振り向いた。まるで俺を待っていた。目が見えにくい彼女は俺のウォレットチェーンを確認し目を見つめた。確かめる様にゆっくりと近づいて来た彼女は両手を広げた。探し出した俺よりも先に君は抱きついてきた。胸に顔をうずめ直ぐに俺を見上げた。待たせていた時の寂しがる目。いつも俺を探しに来た強さを勘違いしていた。頼りたくて来ていたのだと今更、気がついた。
夜の街にマフラーのバックファイヤー。音に怯える君の両耳を塞ぐ。開いた瞳孔を守る為に君の額に口づける。首にしがみつき俺の目の奥を見て喜ぶ。
けして冷めない君に、

俺から離れるなよ。