lynnosukeのブログ

愛なんてそこじゃなくて生きてるだけじゃ足りなくて

流転の波

瞬く星屑の中を泳ぐ二つの水中花。揺らぎ星が舞うドーム。猛毒を持つ二つの花。時折、激しく廻り出すとドームの中は乳化をし濁る。水流が静かになると透明化する浄化、夏の午後に美しさが浮かび上がる。浮遊をし漂い繋ぎ合わせる花。光を届ける星。水の中の閉塞音の中から遠く足音が響く。背後からの戦慄。怒りに震えた重い銃声が三発ドームの中を撃ち抜いた。水流が変わり鼓膜は揺れた。波動とバブルリングの記憶に炭酸水の想い出。僕等は誰の指図も受けない。弾丸は過去と未来を今に放ったが感情の距離よりも原子の海に遮られた瞬間、幾つもの金の環が溢れ出した。煌びやかに守る為に。弾け飛んだ一つの金の環が奴の口を目掛け毒を盛った。僕は君の小指と手首を咄嗟に見た瞬間フラッシュバックを起こした。君は言った。外れてしまわない?絶対に外れないよ。君の顔を見上げるスローモーション。音を届ける君の指先。僕を抱え込み深海に沈む記憶。一斉に雛菊が廻り出す。幼少の時に見た風車の記憶。羽音を立て迎えに来たペガサス。蝙蝠傘を差し雨の中、君を探したドレスシューズの男。僕の背中の絵画に吸い付き描いた彼女。いつも笑顔だった。痙攣を起こす奴を静かに見届ける。
堪えきれずに僕は君の耳を唇で塞ぐ。ゆっくりと左耳を腕で覆い細い首筋の頸動脈を守る。ホルスターから熱いショットガンを出す。彼女を傷つけた鼓膜を目掛け僕は奴を撃った。瞬間、暗転した。