lynnosukeのブログ

愛なんてそこじゃなくて生きてるだけじゃ足りなくて

孵化

レビー小体の彼女に小さな卵を掌に預けた。見覚えがないその卵を彼女は握り潰そうとした。僕は彼女の目を見つめ指を開き卵を指差した。いつも眺めていたまだ見ぬ世界の地図を広げ掌から卵を貰い地図上に置いた。此処に行くんだよ?彼女の髪を梳き編み込んだ。服を着せポシェットを提げてあげた。大事な物を入れるんだよ?彼女は何も持たなかった。文字を書く事が好きだった彼女にペンを見せポシェットに入れた。大切にしていた本も入れた。いいね?行くよ?大事な物はない?それまで無反応だった彼女が小瓶に集めていたビーズをポシェットに入れた。そして口を開き、羽根が無い。と、言った。僕は再び卵を彼女の掌に乗せた。