lynnosukeのブログ

愛なんてそこじゃなくて生きてるだけじゃ足りなくて

みぃちゃん

高校生の時バイトをしていた。そこは分譲型の会社で全国にあり各地の人間が集まっていたのでわたくしの方言ミックスはこの頃に始まっている。何せ親方が大阪出身、バーターが静岡出身と奈良出身と秋田出身。そこに山形、和歌山、長野、千葉、京都、長野、広島と上げるとキリがない。大元の本社はアメリカである。新しく入ったパートさんは方言ミックスが飛び交う職場に外国に来た様だと言うぐらい言葉が分からないと言ったものである。夕方の短時間のバイトが終わると食肉加工のバイトに行き冬場はクローズをするのでスーパーや学校の休み期間中は住み込み旅館でバイトをしていた。その合間に父の介護の為に病院へ。高校卒業後は臨時職員として庁舎の総務課へ。任期満了後には研究庁舎へ辞令が下りた。その任期満了後にも特例で継続をしたいと科長に言われたのだが高校生の時の異国情緒溢れる方言ミックスのバイト先で働く事になった。パートさん達は健在で新人が入社をすると一番若いわたくしを新人扱いをするものだから後からりんちゃんは高校生の時から来ている謂わば古株だと新人にヤキが入った。それ以前に同業の生え抜きと言われる職場に勤めていた事もありパートさんが次の仕事を親方に聞くと、僕、分からへんねや、りんちゃんに聞いたって。それぐらい仕事を任されていた。ある時、新しくパートさんが入った。名前はみぃちゃん。年上の後輩。聞けばみぃちゃんの兄がわたくしの祖父の同級生で仲が良くその御子息さんは自動車学校の教師をしており縁がありわたくしは御子息さんに自動車免許の教習を受けた。さらにはこの御子息さんの母がわたくしの祖母と同級生なのでみぃちゃんはわたくしの父の小さい頃を見た事があると言い直ぐに仲良くなった。おばあちゃんと孫の年齢差があったが友人であった。一人暮らしのみぃちゃんの家に行ったり化粧品等をあげたりと本当に親密であった。パートさん達が引き払った秋に社員わずかの四人だけで新しくハウスを建てていた。会社の近所のみぃちゃんは私らの仕事が終わってもりんちゃん女の子一人で鉄筋を担いで大きなハウスを建てていた。男連中が上で細かい仕事をしてりんちゃんが下から一人で長い鉄筋を持って支えていたと他のパートさん達に言った。それぐらい可愛がってもくれたし最年長の年の功があった。早くに旦那さんを亡くしていたが彼氏さんがいた。おばあちゃんなのだが色気があった。彼氏さんが来る日には一緒に夕飯の献立を考えた。カーラーをプレゼントし髪を巻いてあげた。ある日の事、休憩時間にパートさん達とわたくしのマスカラで遊んだ。わたくしのマスカラはワインレッドにパープル、グリーンだったのだが休憩終わりに集まったトリッキーな目元のパートさん達を見て親方は、皆さんどうしはったんですか!色気づいて!さてはりんちゃんやな!?と笑ったものである。古株のパートさん達がある日の事、様々な理由から時給値上げ交渉をした。他のパートさん達は知らない。その時にりんちゃんは男仕事を一人でしているからと水面下でわたくしの名前が上がった。親方に呼び出され一部の皆さんから時給値上げの話があってりんちゃんも時給を上げようかと思ってんと言われたが咄嗟に頭に過ぎったのは時給が上がれば今以上に働かないといけない、年上の方々より時給が上がるのは心苦しく感じ辞退をした。この事を親方は本社に伝えないといけないので本社の場長のめんこであるわたくしとの板挟みに親方は涙目になり深々と頭を下げた。わたくしが膝の手術後、本社の場長がそんな仕事をさせていたのかと親方に怒鳴った事案もあった。親方が古株のパートさん達に言った。りんちゃん、断りはりました、皆さんの時給は上げます。まさかと思ったパートさん達は直ぐにわたくしの現場に来た。気持ちはありがたいけれどわたくしが高校生の時からいるパートさん達に申し訳ないのと後輩といえども最年長のみぃちゃんに悪い気がした。シークレットだよ?と、みぃちゃんに伝えるとみぃちゃんと仲の良かったYさんに伝わった。後にYさんの娘さんがわたくしの親戚と御結婚をする仲である。パートさん達には本当に可愛がってもらった。孫というより娘みたいだと。うちの娘よりりんちゃんといる、りんちゃんの話し方はうちの孫そっくりだと。聞けばお孫さん三歳児。後輩にも言われた、俺の甥っ子とりんちゃんおんなじだよ、遊び方が三歳児。そんな九十年代から令和、みぃちゃんが亡くなった。口が荒く新人の頃から親方に楯突いていたがわたくしの言う事には絶対服従的で何かあればりんちゃんがこう言ったとボスの様に振りかざした。たまに振ってくる下ネタには困ったが今も小さな体でちょこまかと動いている気がしてならない。可愛かったんだよ、みぃちゃん。八十五歳。わたくしが行くまで待ってらい。一緒にご飯を食べようね、みぃちゃん。
https://youtu.be/gJX2iy6nhHc