lynnosukeのブログ

愛なんてそこじゃなくて生きてるだけじゃ足りなくて

捧げる

君を探し迷い込んだ世界。誰も居ないこの世界に胸が締めつけられる。はぐれてから私はずっと孤独の中に居る。水の音を手繰り寄せる為に目を閉じ耳を澄ます。盲目の森の中を一人さ迷い歩く。深く、深く。掻き分ける体は疼き絡まる棘に血の涙を流す。踏み締める草木の音を確かめながら一歩一歩、暗い森の中で君を探す。徐々に強く纏わりつく蔦を振り切ると千切れ片腕になった。君の痛みを救う為なら構わない。傷口は膿み毒が廻る。渇き切ったはずの体内からは未だ求め溢れ出す汗。
離れ離れになってもセブンスターの木の下で会おう?約束だよ?
疲れ弱った私は走馬灯に足元を掬われ倒れ込んだ。抜け出そうとすればする程に絡み付く。探さないと。
どれ程の年月が経っていたのであろうか。川が流れる音が聞こえる。光を感じ目を開ける。水面には金色に投影される薄翅蜉蝣が次々と舞う。命短し生物に問いかける。この世の果ては何処ですか。遠くのサンピラーを目指す。その下に必ず居る様な気がした。
光に照らされた何色もの小さな硝子ビーズ。ねぇえ?見て?綺麗だね。誰も気が付かない道標だよ、一つ一つ置いて歩くんだ。これなら迷わないで戻れるよ。
ビーズの輝きも見えない棘の道を戻らず歩いた。草の匂いが立ち込める広い草原に居た。風が汗を拭う。遠くを見つめてきたセブンスターの木に吸い寄せられる。
やっと会える。片腕の私は木を目指す。
宙に浮いた君を見た。首には一緒に紡いだ布で首を吊り。
綺麗なままで死にたかったの?死んだ君が目を開け言った。
探したよ。
セブンスターの木の表面上に耳を当てる。片足になった私は片腕で木によじ登る。君の目線に合わせる。
会いに来たよ。
死んだ君はゆっくりと私の首に糸を巻き付ける。重力に堪えられない私は一気に堕ちる事を選んだ。