lynnosukeのブログ

愛なんてそこじゃなくて生きてるだけじゃ足りなくて

友人からのアンサー

「得手不得手」

喉の痛みで目が覚めた。速攻鎮痛剤を飲んだけど、すっかり目が覚めた。
とは言っても、頭がすっきりしているわけではないから、文章を書いて脳のストレッチをしてみる。

僕には、30年来の友人がいる。その友人の彼女は誌的な表現を得意としている。
特に彼女は暗喩が得意、または好きだとの事だ。
彼女の表現する詩的な文章は僕には書けない。
それを、僕に書けというのだ。これはひどい

彼女の得意とする表現方法を辞典的にまとめてみよう。

【比喩:ひゆ】
ある物事を、類似または関係する他の物事を借りて表現すること。
比喩も暗喩も内包する概念。

【暗喩:あんゆ:metaphor】
「彼は鬼のような男だ」が明喩であるのに対して、暗喩では比喩であることを外形的に示す言葉 (「ように」) を用いず、「彼は鬼だ」と表現する。慣用的表現や欧米の詩では明喩よりも多く見受けられる。イメージの喚起力において勝るためである。

【直喩:ちょくゆ:Simile】
一つの事物を直接に他の事物にたとえること。「柳のように美しい眉」「静かなること林の如し」のように「たとえば」「ごとし」「ようだ」などとはっきりと比喩であることを示した言い方。

なるほど、彼女に詩的な表現が出来て、僕に出来ないのは才能という点もあるだろうが、「そもそもの問題」がある。
僕は、暗喩も直喩も内包する「比喩」という表現を記述する事が苦手だ。

「ある物事を、類似または関係する他の物事を借りて表現すること」という表現方法に、まどろっこしさを感じ、その能力・精度・練度が圧倒的に低いため、「他の物事を借りて表現すること」が出来ない。

詩的彼女の表現する「僕の涙でいっぱいのガラス瓶の中から声を無くした君は気泡で問いかける。僕の涙を飲み干し君の涙でいっぱいにする。」という文章。僕には、この様に表現する事が出来ない。

僕が表現すると、かなりの失笑物で、そもそも何を言っているのか分からないものになるのは明確だ。
試しに、やってみよう。

「僕の涙を見る彼女。聾唖の彼女は声にならない声で僕に問いかける。僕には、その声は届いても、その意味は届かない。その不甲斐なさに僕は涙を流し、それでも必死に涙をこらえようとする。それを見て、彼女もまた涙を流した。彼女の僕に対する憐れみなのか、同情なのか、つられ涙なのか、その真意は二人にも分からない」

やはりそうだ。僕には比喩という表現は出来ない。
そもそも書いていて、何を言いたいのか自分でも分からない。

僕が割と表現しやすいのは直接的なシチュエーションを記述する事だ。
それは文学的・芸術的な表現とは異なる。文学的・芸術的な表現は読む側にも想像力を要求する。

読み解く力、才能が低いため、文学的・芸術的な表現が書けない。僕はそう思う。
僕の文章はシチュエーションの構築であり、構造的であり、分析的なのだと思う。
うむ。学者向きかも。まぁ、そんな能力もないのだけど。

僕と詩的彼女は「文章が好き」という点では共通している。
でも、面白い例を見つけた。僕が好きな表現と、詩的彼女が好きな表現。

いやそもそも、興味対象それ自体が異なるという点が明確になる表現例。
おそらく詩的彼女には、欠片の価値も見いだせない文章例。

ではサンプルで書いてみよう。

「おはよう」これは何ともない日常の挨拶だ。だが、これが「大問題」に発展する。
僕にとっては、非常に面白い問題になる。

人間同士で「おはよう」というのは、挨拶のいち形式だ。特段それ以上の意味はない。
だが、人は、その意味は理解しているし、それを使う適切なタイミングを理解している。
つまり「おはよう」の効能を「理解し、知っている」という事になる。

では、「オウム」の場合はどうだろうか。
発話のイントネーションは若干変な感じはするが、「おはよう」と発話する事が出来るし、適切なタイミングでも使う事が出来る。
では、オウムは「『おはよう』を理解出来ているのか?」

基本的に、動物は人間の言語を使う事が出来ないとされている。
オウムの場合、発話・タイミング共に「おはよう」を使う事が出来る。

「知っている、理解出来ている」という定義には外れない。
つまり、動物と人間のコミュニケーションが出来ている間接的な証拠でもある。
逆に、理解しているという事を「否定する事」が出来ないという事になる。

この様に詩的彼女と、僕とでは同じ「言葉」でも、興味の全く方向性が違う。
詩的彼女にとって「オウムのおはよう問題」は、全く興味も無く、どうでもいい話だと思う。

やろうとしたら、上記の問題は、ソシュール言語学や、構造主義の各学者の学説や、ヴィトゲンシュタイン言語ゲームや、シュレーディンガーの猫とか、小難しい話に関連付け、発展させる事も出来る。

どうだい?全く興味が無いだろう?というか、むしろウザいだろ?

僕に比喩を書けという、詩的彼女の要望。おそらく、それには応えられない。
ある一定のシチュエーションを書け、という要望であればなんとか応えられると思う。

僕にオーダーを出す際には突拍子もない事でもいいから、シチューションを要望してくれたまえ。
殺人でも、自殺でも、エロでも、ジャンルは何でもいい。
何せ、直喩も暗喩も内包する比喩は表現出来ないから。

最後に詩的な君に、ある本を紹介しよう。学術書じゃないから読みやすいよ。
目の調子が良い時に読むといいよ。面白いから。
もし読むのがキツイなら、あの○○君に解説してもらうといいよ。

『運と気まぐれに支配される人たち』ラ・ロシュフコー箴言集(角川文庫)