lynnosukeのブログ

愛なんてそこじゃなくて生きてるだけじゃ足りなくて

good-bye

ゴッホの街並みに居る夜、狼の遠吠えの合図が響き渡り暗転が起こった。振り返ると野に放たれた野犬が一斉にわたくしの首筋を狙い奪い去ろうとした。君はわたくしを抱え込み吠え続ける。しっかりと繋がれた手を離す事は無く威嚇をしながら君はウイスキーボトルのキャップを牙でこじ開け火を野犬の群れに放った。青く燃え上がる炎。野犬の眼は赤く焼け燃え尽きるまでわたくし達を最期まで睨んだ。最期の青い炎を君は飲み込んだ。
今は霞んだ印象派の世界に居る。モネの池の上で花びらが零れゆっくりと左回転に浮かぶ。スラヴァのマリアが美しい無情を届ける。捻り合う過去。静かに絹に二人で刺繍をすると片耳のカナリアは飛び立った。声を亡くした君の横髪を耳にかけ囁く。口話で君に聞こえる?と、囁くと君は微笑む。一針一針を感情として残しあの日の様に手を伸ばし繋ぎ合う。切り取る一瞬の幸せ。灰色に静止をし出した君はひび割れてゆく。掴みきれない。君が野に放ったウイスキーボトルには鍵がぶら下げられていた。投げ出した心の扉を開ける鍵が。

私が君を壊した。