lynnosukeのブログ

愛なんてそこじゃなくて生きてるだけじゃ足りなくて

人質

秘めていた感情をくすぶり呼吸に出した瞬間、匂いを放った。アルコールの吐息が途切れ途切れに溢れ出す。蝋燭の灯りが揺らぐ中、首筋に掴まり覗いた背中の絵は逆さまに牙を剥いていた。百獣の王。互いの左手首の知恵の環の音が鳴る。しっかりと両手を握り締める。揺れ動き外れてしまわない様にクロスをし君の左手首をさらに掴み取る。僕は君の体を知っている。君は僕の体を知らない。一緒になると別れがあるから、居なくなるから。君の哀しみを埋めようとしても罪悪感が流れる。僕は深い溜め息と同時に髪を握る。君が言ったんだ。温度がある髪の毛を保有している人間が好きだと。君の笑顔。記憶の底から溢れ出す。温度が無い男と居た過去。それも嬉しそうで。
僕は知っている。

俺からは離れないという事を。