lynnosukeのブログ

愛なんてそこじゃなくて生きてるだけじゃ足りなくて

落日

死の淵を彷徨った。魂と肉体が時に重なり合う残像。僕は朦朧とする意識の中、彼女と初めて出逢った時の衝撃を思い出し全身に電流が走った。色白の肌に触れた手は冷たかった。夜に出現しない彼女と偶然、出逢った夜。彼女はそれを予定調和だと言った。本当にそうであった。僕と彼女は心臓に病を抱えていた。今まで誰にも言わなかった僕は何故か彼女にだけは打ち明けた。僕の中に居る君と鼓動が共鳴しそうさせたのかもしれない。
遠く聞こえる金属音に混じり弾ける心電図の音。誰かが騒がしく僕の名前を呼んでいる。
僕は彼女の声が聞きたい。
君は言った。
あたしより先に死なれては困る。
君の笑顔がフラッシュバックをする。同時に全身に衝撃が走り跳ね上がる。
僕は君と一緒に居た草原に居る。あの日とは違い真っ暗闇の中とてもゆっくりと時間が流れている。無邪気な君は何処に居るの?僕を置いていかないで。君が見えない左目から熱い小さな涙を一粒流すと遠く真っ暗な闇の空へと飛んだ。光りが二度、瞬き次第に大きくなる光り。旋回をしながら僕を照らし出す。此処は夜だけの世界。君は僕に静かに話しをしてくれた事があった。
君は森に住んでいて無数の本という言葉の毒をロープで縛り独りきり重みを引きずり歩いた。ブーツのベルトが切れ其処には夜の太陽が昇った。その先のお話しはまた今度ね。

君を夕陽で照らしたのは誰?

激しい閃光が眩しく僕を探し出す。大きな月光が暴れ出し突如と現れたメリーゴーランド。不協和音と共に逆回転をする人工物。君は確か羽音を立てるペガサスに乗っていた。耳を澄ます。触れてはいけなかった。
いつか好きになるとは思っていた。脳梁の片隅に遺る記憶。
君は僕の太陽。
あたしは貴方の月。
知らなかった。
君の名前を教えて。

私の名前はタナトス

迎えに来たよ。ずっと一緒に居る為に。