lynnosukeのブログ

愛なんてそこじゃなくて生きてるだけじゃ足りなくて

零れ

四角い水槽の中で微笑む。水槽の中の蒼い水は小学生の夏休み。家庭学習の朝顔をビーカーに溶く色水を彷彿する。池にある紫陽花は雨粒に打たれ見上げる灰色の曇り空。花の色だけが美しい。池の横から湧き出る井戸で西瓜を冷やす。冷え固まる濃い緑色と黒の表皮を何度も確認し朱くなる小さな指先を握る。湧き出る水の雫は止む事は無く迸る感情に止め処もない怒りが木霊する。七夕飾りの短冊が揺れる潮騒テトラポットに打ち付けられる原始の枠。切り取った蒼い世界溺れる。美しかった青空を思い出す。腹の底から汚れた感情が溢れ出す。噴出する汽笛の音。心のサイレンが鳴り響く。これは警告。四角い水槽の目地が沁み沁みと漏れ出す。解放してくれ。己の両耳を塞ぎ叫んだ派音で水槽のガラスは破れ叶わない愛を放った。そこに匂いは無かった。美しいままに。