lynnosukeのブログ

愛なんてそこじゃなくて生きてるだけじゃ足りなくて

箱の中

ショートフィルム
花びらを一枚、口に含むと、頭の中の映写機が廻り出す。そっと目を閉じ夢を見る。石鹸箱の中で花を描くと香りが弾ける。同じ香りを身に纏う君と僕。指先から互いの肌に想いを綴る。。石鹸箱の中は花びらが舞い君は僕に花びらを口移す。目を閉じ僕は夢を見る。逆転写された君は僕と大きな砂時計を反転する。お伽の国で君は小さなビーズを集めていた。僕への道標。君を閉じ込めていたはずのガラス瓶。君が手にしていたリヴォルヴァーはショットガンに変わっていた。君は何度も僕を撃ち抜いた。銃口から放たれた見覚えのある花びらを口に含むんだ。
僕は夢を見る。

2018-11-28
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僕の前から彼女は居なくなった。海辺や森に捜しに行ったが居なかった。僕はプロペラ機に乗り星空の中を君を捜した。聾唖で盲目の君の音が無い世界。僕は懐中時計に当たるチェーンの金属音を鳴らしてみる。無力さに胸が苦しんだ。君が居ない部屋でオルゴールの蓋を開ける。君が居た石鹸箱の香りがした。君が好きだったショパンの革命が静かに動き出す。貝殻の中で怯えていた君。気球から帆船に降り立った君。最後はいつも笑顔だった。ぐずる彼女をいつもあやしていた。空が堕ちてきたら危ない。と、僕は言った。強く言い過ぎた。心配だったから。どうして僕から笑顔を奪ったの?創りかけのツリーハウスの屋根は無く僕は雨に当たる。朽ち果てた風見鳥に聞いてみる。彼女はどこに居るの?
風見鳥は言った。
ペガサスに乗っていたよ。

2018-12-30
求め愛
春に芽吹き、冬に止まった過去。白紙の景色と橙色の太陽光と別れた時間。始まりの終わり。タブー視の金色の中で静かに認め合っていた世界。今では眩しすぎる。あの日から永遠を見ていた声は聞こえなくなった。
水中花を握り締めこめかみが疼き出す。石鹸箱から溢れ出す花弁の色彩。僕は暗闇の中に沈んでいた。君だけが持っていた僕の心を開ける鍵で君が色を紡ぎ始めた。
緞帳が幕を開ける。
ゆっくりと羽根を広げる。
背後から君を覆う。羽根でこめかみをなぞる。
同時にリヴォルヴァーを向ける。セーフティーゾーンを弾け君の眼を隠す。
砕け散った日々に溺れる。
いつかの様に。