lynnosukeのブログ

愛なんてそこじゃなくて生きてるだけじゃ足りなくて

求めない

三年前の一月、離れ離れになった。いつも差し入れを買って会いに行くのがパニック持ちのわたくしにはリハビリという名の日課であった。駐車場へ戻る赤信号の前で立ち尽くし、この先にいつもは居たのに今はもう居ないのだと一人、涙が溢れ出した。それからというものパン屋さんの前を歩くとその香りがトリガー。無力さに涙ぐみながら人混みを歩いた。二人きりでずっと一緒に居た石鹸箱の中の記憶。その秋、新たに始動をしたと聞き、生きていた…と、思った。その年からわたくしは全身の痛みが強くなり出掛けられなくなっていった。その冬、居るであろう場所を訪ねた。階段を降りてくる足音に聞き覚えがあり間違いないと思った。懐かしい背丈に抱き付き痩せた顔を両手で包んだ。

昨日、雑貨屋さんにフィラメント球を買いに出掛けた。近くに行きつけのショップがあるのだが身体中の痛みが激しかった。帰るはずが少し寄り道をし居るであろう場所の前を車で通りかかった。通り過ぎる一瞬にガラス張りの作業場で後ろ姿を見た。髪は少し伸びていたが後ろ手に白いシャツ、ノーカラーだと思った。生きていた…。涙が溢れ出した。断薬の辛さを知っている唯一の支えであり端から見ていても、二人はお互いを支え合っていた様に見えた。と、言われた。痛みの矛先に救いを求めたかったのかもしれない。不慣れながらも少しだけ縫い物をしていたと言いたかったのかもしれない。ただ会ってはいけない。クリエイションの妨げになってしまうと見守りたい気持ちが今でも強く、いつも凜ちゃんが会いに来てくれたので今度は僕が会い行きます。

震える指先で触れた紡いだ日、背中合わせで微笑んだ日。

作業台に座るとお揃いのビーズの入った色違いの水中花。

忘れたくはない。