lynnosukeのブログ

愛なんてそこじゃなくて生きてるだけじゃ足りなくて

ハイブリッド

鳥籠の中で人魚の彼女は一つ、卵を産んだ。彼女は愛おしく卵を腕の中で温めていた。堅いその有精卵は孵化をする気配はなく寧ろ日に肥大をし黒点が滲み始めた。ケンタウロスの僕はその殻に向け弓で矢を射った。ひび割れ砕けた卵の中からは充満した硫黄の臭い。混血の奇形の双生児。彼女は恐怖に血の涙を流し叫んだ。僕はその双生児の醜態さに愛情は感じなかった。むしろ怒りに震えた。僕らの子どもは美しいと幻想を抱いていた。肥大は単なる死後の膨張に過ぎなかった。その醜い奇形を見ていると彼女との幸せな時間を奪われたと思った。彼女はずっと幸せそうに待っていた。
僕は悔しさに涙を流し何度も溢れ出す涙を拭い僕らの子どもを見た。異変に気がついた狼がやって来た。狼は僕らを見つめ割れた殻の中の異物を鼻先で探り眉間に皺を寄せ彼女に寄り添った。そして静かに僕を見つめた。狼のその眼孔に映った怒りに満ちた炎。半人半獣で彼女の目を塞ぐ間もなく僕は蹄で奇形の双生児を踏みつぶしにかかり狼が尻尾で彼女の両目を覆った。音が聞こえない彼女の前で踏みつぶす。
許せないんだ。彼女の笑顔を奪う存在は。

嚥下

夕方突然、唾液が飲み込めなくなり気管に入ってしまった。舌の根元が下がりっぱなし上がりっぱなしに喉の筋肉の動きが完全におかしくなった。今も唾液を飲み込むのに舌に力が入ったりしてそうかと思えば呼吸が逆流してきて窒息しそうになる。飲み込むだけに力が入り左顎が鳴りその痛みが耳の中にまで滲みる。先週は本当に死を意識した。骨や肉の痛みに血圧が上がっているのか心臓の動悸が激しく心臓の裏にまで痛みがあった。先月は2度だけ出かけたが直ぐに帰ってきた。動くと熱が上がり吐き気があると水分も飲めない。いつもの痺れに寒気がくると体温調節が出来なくなるので強烈なだるさに見舞われる。この日は午前中から出かけ肌診断。マイナス10歳肌になっていたがあまり喜べなかった。体調や何かを怠れば直ぐに左右されるから。ましてや食べられない飲めないのなら栄養も偏るがファスティングだと思えば良い。今月は11日に出かけ11月ぶりに行きつけのショップのオーナーとハッピーバレンタインをし早々に帰宅。全身の痛みが強いのだ。出かければ必ず目に痛みが出て涙が止まらなくなるので寝ている間もアイパッチである。そうしないと固まった結晶化された涙で目頭を傷つけてしまうからである。もし嚥下が後遺症となったらあまり人に会えなくなるな。唾液を飲み込む度に力が入っているので。まあ、不随意が強いから出かけられないのだが。手の震えや全身の震えがあっても痛みが弱い日に出かけ店員に物珍しそうにじっと見られてショックを受けた事がある。顔馴染みの店員さんや優しい店員さんなら、急がなくていいですよ。とか、すみません、手が震えるので書いてくれますか?と、字を書いたり印鑑を捺してくれたりするのだが嫌な店員は手や身体の震えを見ながらわたくしの顔まで覗き込むのである。あのさぁ、外見上は変わってしまったが中身は変わっていませんからね、わたくし。行きつけのショップや常連さんや友人達は手の震えや痛みを労ってくれるので手が震えて出来ないと言うとみんながしてくれたり痛みがあれば椅子に座らせてくれたりする。夏にショップの外で友人のブーツを磨く際にオーナーが、凜ちゃんに椅子、出してあげるわぁ。と、店内から椅子を出してくれなんて優しいんだ。と、座った瞬間!ガタンッ!ひっくり返るかと思ったらオーナーが、そっれ足一本、折れてんだわ。先に言ってよ!びっくりした!なんてやり取りをみんなに報告し笑い話になりました。寝ている間でも身体中が引っ張られているので仰向けで起きれば踵が敷き布団にがっつりと沈み込み踵が痛む。あるのですよね、踵の床擦れ防止の保護が。横臥で起きれば肋骨や太ももの肉を触るだけでも痛む。なので身体の圧力で敷き布団が直ぐに硬くなるので毎日4時間、布団乾燥機をかけその間はごろ寝マットを重ねた上でじっと痛みに堪えている。これは節約生活だと思っている。飲まず食わずに好きなメロンを我慢をし乗れない車の車検を取り友人のお誕生日とバレンタインのプレゼントを買った。わたくしは一人っ子なので一人には慣れていて普段誰とも連絡を取らないが、仲違いになった友人はあえて友人を作らず唯一の友人はわたくしだけだと言っていた。君にはショップやイベントで集まる仲間がいる。王子さんにも出かければ凜乃介は友達を作ってくる。
暖かくなれば少しは痛みが和らいで出かけられるのかな。今年の楽しみはバイクのイベント7月。それすら行けない気がしているが痛みが弱い日には必ず美容液を買いに行って夏までに綺麗になってやる。

だからなのかタクマのプレイバックという歌詞にシンパシーを感じて辛くなると脳内に流れる。ライヴにも行けないからね。これがELLEGARDENが流れ出したら完全に心が折れている時である。
https://youtu.be/6VQYcG1US0M

なんか10代20代、わたくし本当に元気で駆け抜けていたんだよね。怒られようが今しか出来ないと思って。別の駆け抜けというのもあって15歳の時にパトカーに追いかけられて土手を転がり落ちたなんて事もあった。元暴走族の友人は言った。凜ちゃんが悪いのではなくて周りが悪かったんじゃない?

人の為を想うのは自分の命を削る事。それがわたくしの生き方。
プレイバック。

ブルー

移りゆく季節に見た赤。秋だった。迷い彷徨い君と出逢った。君は水色を棄てたんだ。水色を身に纏うアイツが好きで堪らなく俺の藍色のシャツを、ダンガリーシャツを君は棄てた。

敵わない。

インディゴブルー - lynnosukeのブログ http://lynnosuke.hatenablog.com/entry/2017/03/22/150217

炙る感情

脳梁に伝う左利きの想い出。左利きの男性を見た時、懐かしさに名前を呼びそうになった。鏡の中の動作の様にわたくしが右手を動かすと貴方は左手を動かす。記憶の中でお互いの小指の指輪が映っていた。利き目の左目で唯一わたくしは貴方の右目を見つめ、眼孔鋭いその視線に捕らわれ痺れた。認め合い受け合った。誰にも運転をさせないわたくしの車のキーを貴方に投げ貴方は何事もなくキーをキャッチしサラッと左ハンの運転席に乗り込んだ。貴方の右顔。いつもは左顔を見て来た。会えなくなる気がしていた。なのに、ずっと一緒に居る様な気がした。貴方の笑顔が加速をする。先が見えない二人はあの時に巻き戻される。二人きりでいつも一緒に居た。自傷行為の血の波にサイレン音。暗闇に舐る緊急の点滅。支え合っていた。僕は自室、ラウンドナイフで。君は橋の上で冷えたナイフで哀しみに声を上げた。今、一緒に居る。
僕はアクセルを踏んだ。メーターは260㎞、君となら一緒に死んでもいい。アウトバーンには行けないね。と、ドイツ車の君は笑った。余所見をした僕は君のメルセデスを一瞬で転がした。炎が上がり炎上をした君のメルセデス
焼けてゆく君を探し尽きた。

湿度

熱帯雨林で姿の見えない猿を探した。僕が目を覚ますと懐中時計が無くなっていた。床には小さな猿の足跡が残っていた。彼女がくれた懐中時計。二人で宝探しに行った難破船から見つけた。綺麗な首飾りは僕からのプレゼント。その首飾りも無くなっていた。探している物音に彼女が目を覚ましてしまった。僕は彼女を抱きかかえ絵本を開いた。飛び出す絵本からピンク色の象が立ち上がった。頁から動き始めた象は笑顔、鼻で彼女をくすぐり優しく包み込み背中へ乗せた。僕は象にコインを渡し遊園地へ連れて行ってあげて。と、言うと彼女を乗せ耳を揺らし彼女は嬉しそうに大きく手を振った。
僕は熱帯雨林で姿の見えない猿を探した。猿からはこちらが見えているのか嘲笑う鳴き声が空に響き渡った。ざわめく大きな葉音で聴力が弱い僕は定まらない。傍若無人に頭上を飛び回る姿が見えない猿に地上の僕は尻尾を垂らした。空が曇りだし灰色となった。近付いてくる雷鳴。静かに上がってゆくボルテージに激しくスコールが降り注いだ。濡れた僕の真っ黒な体毛は怒りに逆立った。体温を上昇させ呼吸に共鳴し幾度ともなく逆立てた。雨が音を遮るも一瞬、蒸れた獣の匂いがした。嗅覚を辿り目先に潜んでいるが見えない。
熱帯雨林に夜が来る。不気味に揺れ動く大きな葉音の隙間から月の灯りが差す。暗闇に夜行の朱い目が光り僕の懐中時計と彼女の首飾りをした猿を捉えた。僕は月に遠吠えオッドアイの目で怒りを剥き出しに狙った。

嬉しそうにゼンマイを巻き僕に懐中時計をくれた。進まないその時計は巻き戻す事しか出来ない。歩みを進めてはいつもいつも戻る。それでもいい。と、言った彼女の笑顔のスローモーションが僕の想い出を、彼女の笑顔を奪った猿を許さない。飛びかかる月夜。吠え互いに飛び込み狙った首筋。小さな猿を食いちぎろうとした刹那、僕は猿の爪に目を傷付けられた。一瞬だった。
目の前が血で視界を奪われた。
取り返せなかった懐中時計と首飾り。
君はピンク色の象と遊園地に居るの?
盲目の僕が必ず迎えに行くから。君の香りが染み着いているから。
離れられないんだ。どうしても。