lynnosukeのブログ

愛なんてそこじゃなくて生きてるだけじゃ足りなくて

カルマ

我が儘を言った。五月だった。初めて入る部屋は湿度があった。窓を開け時折、掠める風。夏の始まり。涼しくなった夕刻、ビールを買いに坂道を二人で歩いた。俺の名前、知ってる?あたしは名前を間違えた。付かず離れず歩き歩いた。ビールを並べ部屋のソファーに二人きり初めて並んでいた。シド&ナンシーみたいだった。可愛がってくれた。退廃的に。この人を救わないと、と、思った。欲するよりも母性的に。いつもそうである。アルコール中毒の母を持ったあたしは大人からの都合の良い被害者。頼る男性に弱さの足りないピースを埋められそうになると逃げたくなる。目の前が白く霞む。幸せだったから。背中のライオンが吠える。道化師が笑う。盲目の世界で纏うお守りの音を聞く。目を閉じる。声が聞きたい。その声すら届かない。ゴッホが耳を切り落とした様に震える鼓膜、膨張する左脳。記憶に残るルート66のテレフォンボックス。深夜の風防、ゲッツジルベルト。泣いた夜のボヴディランの乾いた声。湿度を求め湿ったあたしの感情。頭上に降り注ぐ嫌みな雨を受け止める。髪の毛に纏わる雨に細胞を解放してくれ。沁み入る想い。