lynnosukeのブログ

愛なんてそこじゃなくて生きてるだけじゃ足りなくて

十二階段

わたくしの頸動脈を守り弾丸を放った男。速度は一瞬。抱かれながら巻き込み交わしスローモーションに倒れ込んだ肩のピエロのタトゥーを目に焼き付ける。弾ける髪の毛。叩き込んだ跳ね返る地面の衝撃。互いのブラスの旅の御守りが鳴る。気球で浮遊していた時とは違う世界。現実的で大切な世界。わたくしに、君はやり遂げたね、何年、待った?と、守ってくれたピエロが問う。まだ一年、これからだよ。見失わない様に光る星を付け無邪気だった時間とは違う。蓄音機は遠い記憶。冬になった風見鶏は止まっている。伯爵が何やらカリグラフィーで書き活版印刷を始め思わぬ事を聞かれる。君は湖畔の小屋を知っているか?えぇ、鳥葬を見ました。

君はあの時、死んだんだよ。

どうしようもない人生に笑いが込み上げた。ピエロは夢だったのかもしれない。あの七夕飾りがカラカラと立てる夏。振り返ればずっと佇んで居た男。

二度目の鈍る深紅の緞帳がゆっくりと幕を開ける。美しくギロチンに捕らわれた生物が物乞いをする。ケロイドのマネキンが誘う。

総ては俺の手の中。