lynnosukeのブログ

愛なんてそこじゃなくて生きてるだけじゃ足りなくて

シンボリック

光が差すグラスの中でゆっくりと泳ぐ三匹の朱い金魚を見ていた。グラスの中では狭いでしょう。わたしはグラスを人差し指で押し倒した。水と一緒に放たれたテーブルの上に広がった小さな水面で朱い金魚は二度、跳ねた。鰓呼吸をしている金魚を見つめ水が無いと生きてゆけないのにそれでも狭いグラスの中から解放してあげた。ゆらゆらと水の中と同じ様に部屋の中を泳ぎだした三匹の金魚。とても優雅に。あぁ、美しい。わたしは知覚できる朱い金魚を眺めていた。すると一匹の金魚がわたしの頭上を腹這いになってゆっくりと泳いで行った。口元に目をやると幾つもの牙を剥いていた。異様な恐怖感に心拍数は上がり慌てて目を覚ます。夢だった。近頃よく見る金魚の夢。三匹の中での一匹が自分自身の劣等感。腹の中に溜まった空虚が腹這いにする。求めきれない渇いた感情に怒りは牙となる。金魚が睨みつける一瞬に動く黒目でわたしを見つめ通り過ぎ今度はスピードを上げ戻ってくる。白目の面積が大きくなりいけない罪悪視がのしかかる。二匹だけはしっとりと泳いでいる。それはとても美しく揺れる尾鰭を目で追いかける。水の無い部屋でわたしだけが醜くなり形相を変える。見開いた目で暗闇を見つめる。小さな薄い唇で呼吸をする。見えないバブルリングの閉塞音だけが聞こえる。