lynnosukeのブログ

愛なんてそこじゃなくて生きてるだけじゃ足りなくて

夢追い

泥の中でしか生きられないと彼女は言った。僕は君が思う程、綺麗な男ではない。そんな会話を思い出し僕は迂闊にもラウンドナイフで指先を切ってしまった。滲み出る汚れた血を見ていると彼女と初めて触れた指先の感覚がフラッシュした。互いに震える指先で小さなビーズを集めた。微笑む彼女を見ていると何だか素直になれた。嬉しそうに履いている僕の靴をあげると言うと彼女は断った。セーターで温めあった秋のファッションショー。疑う事を知らない彼女を僕が守ると言ったのに守れなかった。真っ赤な彼岸花が目に焼き付く。彼女が近くに居る様な気がして振り返った。そこは真っ白な冬だった。凍える寒さに僕は無力だった。