lynnosukeのブログ

愛なんてそこじゃなくて生きてるだけじゃ足りなくて

背徳

いつも背中を追いかけていた。そして必ず振り返ってくれるその仕草に弱い。りんを置いて行くのが、寂しい思いをさせてしまう。と、必ず振り返る。わたくしは違った。振り返らない。そのわたくしの背中を見た瞬間、もう俺の元には戻らないんじゃないかって思って追い掛ける。背後から強く抱きしめられる。腕の強さと服の下の浮き出る血管を知っている。頬を掌が包む。俺から行かないで。わたくしは静かに涙を流す。愛されると逃げたくなる。俺が傍に居る。ずっと一緒に居る。わたくしは知っている。遺された悲しみを。バイクの後ろに乗ると掴まってろよ。と、腰に腕を回す。手、冷たいな。と、手を握りしめてくれる。片手運転の背中に抱きつく。急ブレーキの時には押さえてくれた。絶対に離れるな。冷たい風が切る。ママに抱きつき自転車の後ろに乗っていた記憶、エビデンス。人の速度。壊れる程に戻って来る波の記憶。同じ泡は一つも無いんだよ?原始の海。お互いの手をかざす。眼を見る。好きだよ、愛している。いつまで一緒に居てくれるの?
ずっとだよ。