lynnosukeのブログ

愛なんてそこじゃなくて生きてるだけじゃ足りなくて

ジオラマの世界の僕らは冬を迎えた。ツリーハウスの屋根には雪が積もり風見鶏の鶏冠にも雪が積もっている。寒さに動けない風見鶏は雪を払いのけてくれと文句を言った。少しでも景色を暖めようと壁にシルクスクリーンをぶら下げ僕は緑の木々を描いた。根から幹へ揺らぐ葉が良いのか止まった葉が良いのかと彼女の様子をうかがい振り向いた。彼女は僕が描く景色に目もくれず僕が修理をした蓄音機に夢中であった。蓄音機には引き出しがあり彼女はレコード盤ではなく光る星を大切にしまっている。それを大切そうに見つめ引き出しを開けては閉めている。何でも夜空に飛び出した時の目印なのであまり発光をさせたくはないらしい。夜空で迷子になった時の記憶が怖いのであろう。星を頬に付け喜んだ笑顔。貝殻の中での隠れんぼ。僕は風に揺れる葉を描いた。風が好きな彼女と揺れる世界を。二人だけの幸せな眩しすぎる季節を思い出し振り返ると彼女が居なかった。この雪空の下、どこへ迷い込んだのだろう!?僕は外に飛び出した。いつもなら風見鶏が教えてくれるが凍り付いてしまっている。僕は吹雪の中、名前を呼んだ。打ちひしがれながら、何処に行ったんだ。まるで見えない。ペガサスが迎えに来たのだろうか?足跡も無い。僕は深い雪を走り夢中で湖畔へ走ると遠く小さな炎が見えた。光を眩しがる彼女が何かを温めていた。彼女を見つけた僕は放心状態で近づいた。彼女は僕がうたた寝をしていた時にシルクスクリーンに描いた木々で木脂でランプの灯りにしたかったと伝えた。温めたかったと。